統計の負の力

統計

今回は、ウィル・ロジャース現象の具体例、第2段です。
前回、ウィル・ロジャース現象とはなんなのかを取り上げましたので、
もしまだ読まれていない方がいらっしゃいましたら、以下にリンクを貼っておきますので、
そちらを読んでいただいてから、こちらの記事を読んでいただけると幸いです。

さて今回は、『私は、ウィル・ロジャース現象などに騙されることはなく、物事を正確に見抜く力がある。』と
前回感じた方にはぜひ読んでいただきた内容となっております。

では、まず最初に以下の文章を読んでください。

■近年の治療成果の向上
がんのステージは、ステージ0期からⅣ期までの5段階に分類され、ステージの数が上がっていくにつれて、
生存率は下がっていきます。日本におけるステージⅠの全がん生存率は、1997年では「83%」でしたが、2012年では「87%」でした。この生存率の上昇は、ご存知のとおり、近年は医療技術が著しく進歩したためであり、治療の成果が向上したことによるものであります。

さて、上記の見解を読んでいただいて、『もっともで異論なし。』と思われた方は、ぜひ最後まで読んでいただきたいです。

まず、医療技術が進んだことにより治療の成果が上がり、結果的に生存率の向上に影響したこと自体は、否定はできません。
しかし、近年の生存率の上昇には、治療の成果だけではなく、診断技術の向上が大きく影響を与えていることは事実です。

もう少し詳細に説明すると、1997年の診断技術では、発見できなかったごく小さな腫瘍が、2012年の診断技術では発見することができ、
そういったごく小さな腫瘍を持っていた人々は、1997年では「問題なし」と見なされ、2012年では「腫瘍あり。」となり、ステージ1などに分類されます。しかし、そういった2012年にステージ1に分類された方々は、1997年のステージ1の方々よりは、腫瘍が小さく健康状態が良いため、その分、2012年にステージ1の生存率は向上するのは当然のことです。

つまり、今回のウィル・ロジャース現象の具体例では、「生存率の向上は、医療技術が進んだことにより治療の成果の向上したためだけでなく、診断技術の向上が大きく影響している。」と考えられた人は、物事を正確に見抜く力があると言うことができるかもしれません。しかし、今回見抜けなかったとしても、何も問題はありません。大事なのは、与えられた情報を鵜呑みにするのではなく、
『本当にそうなのか? 他に要因はないのだろうか?』と考えることなのです。そういった思考を身につければ、今後誤った道を選択することは、徐々に減っていくでしょう。

最後に(統計の負の力について)

今回は、医療を題材にして、ウィル・ロジャース現象を説明しました。
なお、日本におけるがんの生存率については、性別、年齢、ステージごとなど切り分けて調べることができます。(本記事の最後にサイトのリンクを貼っておきます。)
なお、このサイトを使用する上では、注意事項を読む必要がありますが、その1つに以下の記載があります。


生存率は、何万人というがん患者さんの生と死の結果わかった数字です。
ご覧になる方の受けとめ方によっては、生きる力になることもあるでしょうが、逆にその意欲を失くしてしまわれることもあるかもしれません。おひとりおひとりが、そのことを心に刻んだうえでご覧ください

私は、この文章を読んで納得しました。統計には、人生の困難を乗り越える力があります。
しかし、時には、人の生きる力を削いだり、才能やチャンスを潰してしまう可能性があるのです。
「才能・チャンスを潰す」とは、例えば、自分自身の経験だけで物事を判断し、部下の新鮮な意見を頭ごなしに否定してしまうことです。
この記事を読んでいただいている人の中には、部下を持つ人、これから部下を持つ人、あるいは起業してお客さんにサービスを提供している人など、様々な方がいらっしゃるかと思います。そういった方々には、統計の負の面をしっかりと頭に入れて、行動しなければならないと私は思っております。
こんなことは、もしかしたら既に皆様もわかっていることかもしれませんね。私の杞憂であることを願っております。

※上記のサイトをご使用される方は、注意事項にも記載しているとおり、ご自身の決断でお願いいたします。

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